
プエブラの午前、ビールを片手に人目のないホテルの屋上へ上がる。高い建物がないので町が一望できる。目の前のぽてっとした白い教会の内側の壁は黄色…カラフルだけど、落ち着きある美しい街だったな。今日は海沿いのリゾート地、ベラクルスに向けて出発だ。
プエブラからベラクルスまではADOとAUというカミオンがでている。今度はAUに乗ってみよう!とプレミアのボレトを買い求めると「ウチにはないよ」とADOを指差す。2等専用のバス会社らしい。
キオスクで水を買い求めるとお店の人に「ポンチョ」と言われ。民芸店で購入したポンチョを早速着ているからかしら…と「ボニート」と答えたら、「オッチョ(8ペソ)って言われたんだよ」とボーズに言われ恥ずかしい思いをする。
出発まで時間がなくて「アドアド!」と走っていると「「あっちだよ!」とタクシーの客引きが教えてくれる。
地球の歩き方を読むと、ベラクルスについて「この町の第一歩はアルマス広場から始めたい。数々のホテル・カフェテリアに囲まれた広場には…日中からいくつもの楽団が繰出し、夜にはハローチョの踊りが上演され、広場もダンソンを踊る人たちで埋め尽くされる。」とあり、夕暮れ時に踊っている人たちの写真が載っている。
むむむっ!これはとっても楽しそう…と、アルマス広場に面する安ホテルを3泊分とった。
それにしてもニッポン人のおんなの子はモテちゃうらしいから、一緒に踊ろう!と誘われたら困るな…と「ノ セ バイラール ビエン」と断り文句を暗記する。
4時間のバス旅を終え、タルミネからタクシーに乗り込む。不安定な天気だが、海が近いよ!という爽やかな空の色。ヤシの木が植えてある閑散とした広場に降ろされる。「この先がホテルだよ」
荷物を降ろして、取合えず海に向かう。「誰も踊ってないじゃないか!」と文句を言いって不安を払拭しようとする。嘗ては白塗の建物は錆びれ、強風のためかゴミが所々に溜まっている…ビーチというより漁港の臭い。「伊東みたいですね…」
突然の雨、適当な店に避難。つまみは30ペソ以上と、今までよりちょっとお高めリゾート価格。
雨が上がって海へ…の続き。堤防の前の通りまでやってくると若者達が「あっちいくの?」とクスクス笑っている。「うん」と通りに出ると強風に飛ぶ。
露店も当然出ておらず街へと戻る。観光地だからかサッカーショップが多い。ワタシはプエブラで買ったプーマスというチームの黄色いTシャツを着ていた。プーマスファンなのかと言うとそうではなく、ただ知らずに変なトラのマークが可愛かったから買っただけなのだ。「ベルディって書いてあるTシャツを着て歩いてるようなもんですよ」途端に恥ずかしくなって居心地が悪くなる。
レストランを覗きながら歩く。黄色い店の前でサンドイッチをもさもさ食べているおばちゃんに「アンタたち、ここ入んな!ここ、うまいよ!」と促される。一旦通り過ぎるが目星い店がみつからない気がして戻ってくるとおばちゃんがニッと笑って、入んな!入んな!と言う手振りした。
注文に一苦労。ビールが1本しか来なかったり、つまみも何が何やら…すると斜のテーブルにいたベースボールをやっていそうなアメリカ人ぽい若者が「英語なら喋れるだろ?」と助け舟をだしてくれたのだが、ボーズは何故か「ノ」と答えてる。若者は「少しも?」と聞き返して首を傾げて席に戻ってしまった。「リトル」とか答えて助けてもらっとけば良いのに…
トイレから戻ってくるとボーズの隣におっちゃんが座って話している。イチカワ!イチカワ!どうやら日本人友だちがいて親近感を覚えて声をかけて来たようだ。やはりワタシのシャツを見て「プーマス!」と喜ぶ。ビールを呑みながら故郷の話か…チャチャラカス、チャカチャラカス、ソル…と言ってハートを押さえる仕草。「太陽の国チャチャラカスは自分や奥さんの故郷で素晴しいんだよ」って感じかな?とうんうんと聞く。
しばらくするとおっちゃんの友だちの紳士がやって来て、おっちゃんが改めて自己紹介をしてくれる。「俺はフレディ、こいつはビビってんだ。俺もプーマスファンだけど、ビビはベラクルスなんだ。アミーゴだよ、ボーズにサケトビ!」とちょっと間違えて呼ばれつつもアミーゴ同盟を結ぶ。
それにしても言葉の壁、1割くらいしか理解できてないのに諦めずに相手をしてくれて、楽しくビールをご馳走してくれるおっちゃん、なんだか申し訳ない。友だち紳士は店内に入ってくる物売りの人からなにか買ったりして退屈しのぎをしている。仕舞には靴磨きの男の子に靴を磨いてもらった上、ハンバーガーをご馳走して上げている。裕福で良い人たちなのだな…そのうちおっちゃんは「立て!ふたりとも」「踊れ!」と空いた場所に連れて行かれる。「腰はこうやって回して…」となかなか色っぽいサルサのステップを踏む。「ノ セ バイラール ビエン」こんな風に使おうとは…いいから真似してみろ、と言うんでもうふたりしてやけくそ。1曲終わると、店のスタッフたちがご愛想ばかりに口笛と拍手をくれる。
席に戻ってくると友だち紳士が、今度は自分と踊ろう、と誘ってくると「ダメだ。アミーゴボーズの彼女なんだから触るな」とおっちゃんが制する。
いいひとだなぁ…最後に物売りの人から買った赤いバラを一輪ずつ戴いて店をでる。ベラクルスで粋なおっちゃんたちに会えて嬉しいよ。「新橋ですよ」とボーズが言う。
依然と盛上がっていないアルマス広場を後目にホテルへ戻るのであった。